安彦良和 機動戦士ガンダム THE ORIGIN展(東所沢)その2

機動戦士ガンダム TheORIGIN展 安彦良和 原画展

そうそう、ランバ・ラルとの戦いの流れから移動基地としての役割も兼ねていた大型の陸戦艇の「ギャロプ」が登場します。
アニメ版ではギャロップに連結されている「カーゴ」でホワイトベースにぶつけるような攻撃を仕掛けるのですがORIGINではギャロップ本体で仕掛けています。
ラルのイメージが青い機体グフであるように、ギャロップはハモンを思い出させる兵器(メカ)と言えます。
またORIGINではガルマ専用のギャロップも登場していますね。


ガンダムの物語のうまさはロボットものではあってもメカ先行ではなく、キャラクターやその局面を大きく印象付ける役割としてモビルスーツやモビルアーマー、そのほかのメカが登場している点にあり、そのことから多くのメカがファンの愛情を得ることにも繋がっています。



話は脱線するのですが、ギャロップはバンダイからはMOBILE SUIT IN ACTIONシリーズとしても商品化されています。商品にはカーゴは付属していないのですが、ファンの中にはカーゴを自作する猛者もいてガンダムメカへの愛情を見ることができます。

機動戦士ガンダム TheORIGIN展 安彦良和 原画展 ギャロップ

安彦良和ORIGIN展19


さて、過去編はORIGINでのみ描かれていてアニメでは全く描かれていないパートとなります。

会場パネルのコメントでも安彦氏は「正しいジオニズムとは何か」と言われていますが、心理的背景から生み出される問いかけのようにも感じます。

戦争を体験していない幸せな私が偉そうなことは言えないのですが、正義や悪がそれぞれの価値観や流れの中にあるんだろうなとは思います。


過去編ではシャアとセイラ、そしてザビ家の真実を解きほぐす作業が行われています。
特にアニメではシャアとセイラはダイクンの遺児と言う設定程度(ガンダムの物語の導き手としてのエピソード)の描かれ方をしていて詳しく語られてはいません。それはそもそも当時は存在していなかったのでしょう。
もちろん当時はロボットアニメとして放送されていたのだですから、それは仕方のないところだろうと思います。

コミックを読んでいても、一通りファーストガンダムを見て(理解)いれば特にフラッシュバックしたような感覚でワクワクさせられます。

機動戦士ガンダム TheORIGIN展 安彦良和 原画展
機動戦士ガンダム TheORIGIN展 安彦良和 原画展
機動戦士ガンダム TheORIGIN展 安彦良和 原画展
機動戦士ガンダム TheORIGIN展 安彦良和 原画展

またここで幼きキャスバルとアルテイシアの歴史に登場するモビルスーツが「ガンタンク初期型」です。ORIGIN展でも連載用にカラーマーカーの入ったデザイン稿がショーケースの中に展示されていました。

ガンダムファンの中にはガンタンク好きが多く存在するのですが、初期型は従来のガンタンク以上にキャラクターとミリタリーの中和感が程よく、活躍する場面もあって人気でした。


過去編ではキャスバルとアルテイシアがガンタンクに乗り込んで戦うシーンがあります。また物語後半ではセイラとなったアルテイシアが再びガンタンクに乗り込む場面があり、コクピット内を懐かしむシーンがありガンタンクの印象が強く残ります。

下のイラストはガンタンクのデザイン稿ですが、描いているのは大河原氏です。

安彦良和ORIGIN展24

この過去編では「黒い三連星」なども登場し、従来数話のみの登場だったキャラクターの関係性や相関性もケアされていて厚みが出ています。今時の言い方で言えば綺麗に「回収」されている感じでしょうか。



ORIGIN展の魅力は、、、
カラー原稿やカラーイラストが素晴らしく圧倒的!なことです。
人物はもちろんなのだけれど、安彦氏独特の筆致で描かれるモビルスーツは機械的にして人間的であり、またその逆でもあるのです。

機動戦士ガンダム TheORIGIN展 安彦良和 原画展
機動戦士ガンダム TheORIGIN展 安彦良和 原画展

過去編から登場する黒い三連星こと「ガイア」「オルテガ」「マッシュ」もまたオジサンキャラクターです。
いやルウム戦役当時はもう少し若かったんですが‥‥でも大差はないですね。

安彦良和ORIGIN展27

純粋に機動戦士ガンダムの世界を官能するという点でも長期連載から様々なエピソードが盛り込まれたORIGINはとても楽しめます。

03 ジャブロー編/オデッサ編

戦局は中盤となり物語の舞台は地球へと移ります。

安彦良和ORIGIN展28


実際にアニメではどのように人気が推移したのかはわからないのですが、おそらくスポンサーの意向だと思われ以降は投入されるモビルスーツやモビルアーマーの数も続々と増えていきます。

オールドファンからすると、この時代で嫌なモビルスーツなどいない!と思います。


時の流れというフィルターを通してより美化され続けていることもあるとは思いますけどね。

なのでこのコーナーはモビルスーツ目線では特に盛りだくさんです。



安彦氏が解説でも説明していたのですが、ORIGINでは「ジャブロー攻防」→「オデッサ会戦」の順に展開を改めています。
また主要キャラクターの1人である「マ・クベ」はジオン軍地球侵攻軍総司令と言う肩書に代わっています。個人的には何でもいいのですが(失礼)、彼の愛機の「ギャン」が完全に専用機として登場(アニメもORIGINでも同様)しているため、それなりの立派な肩書があった方がふさわしいのではないかと感じたので私は違和感はなかったです。

このマ・クベはアニメ版、劇場版、ORIGIN版と意外と役割などが変遷したキャラクターでもあります。


そもそもアニメ版の方が、わざわざやられるために登場した感(なんならギャンを登場させたいがため)すらあったため消化不良に感じていました。実際にMSギャンはゲルググと共に量産試作された機体のひとつなので、なかなかの高性能機であったはずなのです。

機動戦士ガンダム TheORIGIN展 安彦良和 原画展
機動戦士ガンダム TheORIGIN展 安彦良和 原画展

そして、そして、、、

ジャブローでは何と言ってもジオン軍水泳部が大活躍するのですが、ファンの間でも話題だったのが「意外とズゴック以外はモビルスーツがリファインされていない」と言うことです。

私も最初にズゴックを見た時にはデザインと言うか在り方を少し変えたなとは感じました。なので他の水陸両用モビルスーツも、より水中特化と言うかデザイン意図を明確にする意味でアレンジするのかと思っていました。

例えばその一つがモビルアーマーの「ゾック」です。
個人的には、なんだか幾何学的でちょっとかわいくてエメラルドグリーンの機体色も含めてすごく好きなのですが、より潜水艦的なディティールでもいいのかなとも思っていましたが、実際にはほぼそのまま登場してきます。もちろん潜水艦としては立派にマッドアングラーがあるため、そことは壁を隔てたいというか、ゴチャゴチャにはならないほうがいいとは思います。

機動戦士ガンダム TheORIGIN展 安彦良和 原画展
機動戦士ガンダム TheORIGIN展 安彦良和 原画展

ああ、ゾックは良いですね~~。
ただ安彦氏の描く水泳部では「アッガイ」も見逃せない。その動力性能はもちろんですがアニメ版(劇場版)では有名な体育座りするアッガイとその上を走り抜ける「カツ」「レツ」「キッカ」のイラストは超有名です!!このイラストがアッガイの人生を変えたと言っても過言ではないです。

そのイラストは劇場版 機動戦士ガンダム 哀・戦士篇の公式パンフレットの裏表紙に掲載されており、もちろん描いたのは安彦氏です!!!
私もこのパンフレットは今でも所有しています(なんならクラッシャージョウのパンフだってありますwww)



話を戻すとアッガイのデザインは頭部から胸部くらいまでは大きな変更は無く、最も異なる脚部もシルエット的な変化ではなくあくまで機動や稼働といった面からのアレンジに留まっていいます。


なおシャア=赤い機体はズゴックでも健在ですよ。
ちなみに「機体が赤いのはなぜか?」に関しては諸説ある・・・・・・と言うことでいいのではないかと思う。
実際には設定はもちろん様々な局面できちんと理由があるし、当の方々はもちろん知っているのだろうが、シャアが赤が好きな色だったで良いと思っています。



さてここでまたしても有名なモビルスーツが登場する、それが重モビルスーツ「ドム」です!
当時としては登場していたのは通常の陸戦型と宇宙型「リック・ドム」の2機体となります。

何と言ってもこのドムの人気を決定づけたのは3つのファクターによるものです。

ドム人気のわけ

・黒い三連星というとガイア、オルテガ、マッシュの3人の通り名
・ジェットストリームアタックと言う3機体でのフォーメーション戦術
・マチルダ・アジャンの死

黒い三連星の駈る機体としてドムが登場してきます。子供向けと言うのも意識していたと思うのですが、三機編隊で繰り出されるジェットストリームアタックはそれまでにはガンダム世界には無かった ”必殺技” のような存在です。
見た目の印象とは異なり、ホバークラフトのような仕組みで高速での移動が可能です。

アニメではドム=黒い三連星の登場であったのですが、ORIGINではザクを駆る彼らも描かれています。
シャアは「赤い彗星」、ガイア達は「黒い三連星」、ガンダムは「白いヤツ」といった具合にアニメでは呼ばれていました。

ORIGIN展でもドムはいくつか展示されていました。

機動戦士ガンダム TheORIGIN展 安彦良和 原画展
機動戦士ガンダム TheORIGIN展 安彦良和 原画展

実際にドムはその後もエスカレートしすぎなのではないかと言うほどのバリエーション(MSVがあるからなのですが...)が生み出されていくことになります。
私もドムのガンプラはいっぱい作りました。スカートなどのパーツがとにかく大きくて塗装が大変だった思い出があります。

機動戦士ガンダム TheORIGIN展 安彦良和 原画展
機動戦士ガンダム TheORIGIN展 安彦良和 原画展

陸戦としてオデッサ編ではマ・クベの騎乗する「ギャン」が登場します。
マ・クベは地球の文化への造詣も深いとされ、ORIGINでは重要な役割に変わっているのは先ほど書いた通りです。愛機となるこのギャンもディティールこそ変わっている部分はありますが当時のアニメ版から印象はほとんど変わりません。

ORIGINでは一部設定も含めて物語が改変・修正されているのですが、マ・クベがギャンを駆りガンダムと対戦することが無くなったのは戦いの面では残念ではあるのですが、ある種良い事でもありました。
こちらも先ほどチラッと書きましたがアニメ版ではとにかく「カッコ悪い」イメージが強いからです(私だけでしょうか)
なんかごちゃごちゃ言って作戦を敢行している割にはアムロにあっさりやられる始末です。。。

モビルスーツの原点(歴史的ではなく)はやっぱりザクにあって、当時も今もユニーク過ぎるデザインであるギャンもブタ鼻のゲルググもどこかで延長線上にいると思うと納得してしまうから不思議です。



デザインのリファインと言う意味ではモビルアーマー達もあまり大きく変更されていません。
水泳部のゾックやグラブロはもちろん、その後登場するザクレロやビグザムも基本的にはイメージ上の変化はありませんね(なぜかビグロは出ない・・・・厳密には最後の最後でチラチラっと数カットは出るのですが.......)


でもそうかと思えば、こんなザクレロ風デザインの大型爆撃機も登場したりしています。
これはかなりカッコいいです。

安彦良和ORIGIN展37

ORIGIN展を鑑賞していてアニメ版と漫画ORIGIN版を回想しながら会場を歩き回ります。
ふと立ち止まって「あ、そうだ」と戻って「そうだよな」などと自分の記憶とつき合わせるのも楽しかったです。

安彦氏のORIGINによってアニメ版以上に物語に立体感が出て、観る人にとってそれぞれの回顧録のようなものが出来上がっていくようです。


初代ガンダムがアニメ放送の時は私は学生だったこともあり、次々に新しいアニメが作られていたのですが、まだまだTVが娯楽の中心だった時代なので飽きずに良く観てたな~とそんな思い出も蘇ってきました。